意匠権はもういらない?! 実用品の著作権法、不競法の適用〔水野健司特許法律事務所〕

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2017年9月1日
意匠権はもういらない?! 実用品の著作権法、不競法の適用

■はじめに
 国内では多くの製品が成熟期から衰退期を迎えており、技術面・機能面での差別化が困難になっています。そのため、新製品を開発する上では、デザインが重要になっています。
 この点、いすなどの製品(実用品)のデザインは、意匠権制度が準備されています。しかし、意匠権は、登録されるまでに費用と時間がかかり、また登録から20年という存続期間であるため、デザインの侵害が問題になった時点では、意匠権がない場合も珍しくありません。
 そこで、今回は、実用品が著作権法や商品等表示として保護される場合について紹介します(知財高裁平成27年4月14日判決、判例時報 2267号91頁)。
 
■実用品が著作物といえるか?
 実用品は、美術工芸品とは異なり、それ自体は「実用に供され,あるいは産業上の利用を目的とする表現物」(応用美術)にあたります。そのため、当然に美術の著作物にあたるものではありません。
 しかしながら、応用美術であっても著作物性、特に創作性が認められる場合があるとされています。裁判例では、「厳密な意味で独創性を有することまでは要しないものの,作成者の何らかの個性が発揮されたものでなければならない。表現が平凡かつありふれたものである場合,当該表現は,作成者の個性が発揮されたものとはいえず,「創作的」な表現ということはできない。」としています。
 そして、作成者の個性が発揮されているか否かは、さまざまな形態がある実用品については、個別具体的に判断するとしています。
 例えば、幼児用いすについては、特に4本の脚で構成されていることが多かったのに対し、2本の脚で構成した点に作成者の個性が発揮されているとして著作物性を認めました。
 裁判例では、作成者の個性が発揮されていることの判断として、平凡かつありふれたものでないこと、つまり従来、一般的に存在していたものでないことを重視しています。
 結論としては対象製品が2本脚の構成ではなかったため、侵害ではないとされましたが、いすのような実用品で明確に著作物性を認めたのは、実用品に対する著作権侵害の可能性を切り開いたものといえます。
 
■意匠権は必要でなくなったのか?
 実用品が著作権法で保護されるのであれば、意匠出願による設定登録は必要ないのではないか、とう疑問が起きてきます。
 この点、意匠制度と著作権制度は、趣旨・目的が異なるものであり、重要なデザインであれば、やはり意匠出願を検討すべきでしょう。
 意匠権があれば、類似意匠まで独占権が及びますし、原作品を利用するという依拠性も必要ありません。著作物性(創作性)がどの範囲で認められるのか、については最終的には裁判所の判断を待つ必要があります。
 登録意匠があれば周知意匠や関連意匠との関係で、需要者が最も注意を惹く部分(要部)の認定により侵害判断が比較的容易になります。いずれにしても意匠権による保護の方が著作権法による保護よりも安定していることに間違いはありません。
 
■デザインが商品等表示にあたる場合
 また不正競争防止法との関係では、デザインは同法2条1項3号の形態摸倣行為が不正競争行為として禁止されることにより保護されます。しかし、形態摸倣行為は国内の販売開始から3年で消滅時効にかかると規定されており、その後の保護が問題になります。
 裁判例では、同法2条1項1号に規定する商品等表示行為にあたる可能性を認めています。
 すなわち「商品の形態は,不競法2条1項1号が商品等表示として例示する商号,商標などとは異なり,一次的には,当該商品自体の機能の発揮,美観の向上などの見地から選択されるものであり,出所識別を本来の目的とするものではない」としつつも、「商品の形態が,客観的にみて明らかに他の同種商品と識別し得る特徴的なものであれば,取引の過程において,特定の出所を示すものとして需要者に認識され,二次的に,出所表示機能を備えるに至ることもある」とし、さらに、「商品の形態が,①客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性),②特定の事業者による長期間に及ぶ継続的かつ独占的な使用,強力な宣伝広告等により,需要者において,当該特定の事業者の出所を表示するものとして周知されるに至れば(周知性),不競法2条1項1号の「商品等表示」に該当する」としました。
 具体的には、幼児用いすについては、従来の一般の物とは異なり、2本脚で構成している点に特別顕著性を認めています。
 商品等表示による保護は、事業者に知れ渡っているという周知性が必要ですが、国内販売から3年を経過したものや意匠権が存続期間の満了により消滅した後に保護の対象となる可能性を残しています。
 
■デザイン戦略
 デザインが著作権法、形態摸倣、商品等表示として保護される可能性があるとしても、新製品の開発にあたっては、意匠出願を検討すべきことに何ら変わりはありません。
 いずれにしても、新製品のデザインが従来品とは異なる特徴部分があることをわかりやすく、シンプルな形で示すことが権利を主張している場面では重要になります。
 そしてこの特徴部分というのは、その市場における顧客に対する唯一の提案として訴求していく部分にもつながっており、(法的な)デザイン戦略がマーケティング戦略と不可分の関係にあることを確認できるでしょう。
 
■知財分野顧問契約のご提案
 当事務所では、知的財産権に特化して、一箇月当たりの対応時間を1時間までとした形の専門分野の顧問契約を提案させていただいています。
 
平成29年9月1日
(弁護士・弁理士 水野 健司)
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