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2019年11月18日

投資の勧誘行為が不法行為となるとされた事案

■はじめに

 株式や社債を投資として購入したものの、当初の説明と違って損失を受けてしまったという場合がよくあります。投資である以上リスクは受け入れなければなりませんが、購入者の知識や経験、勧誘時の説明内容によっては違法となり、損害賠償が認められることもあります。

 

■証券会社に課せられた義務

 東京地裁平成29年11月17日判決(ウエストロー2017WLJPCA11176002)では以下のとおり、証券会社が顧客に過度の取引により損失を生じさせた場合、不法行為が成立すると判示しています。

 

「金融商品取引業者である証券会社並びにその役員及び使用人は,顧客に対して誠実かつ公正に,その業務を遂行しなければならない(金商法36条1項)。また,金融商品取引業者である証券会社は,業務の運営の状況が,金融商品取引行為について,顧客の知識,経験,財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘を行って投資者の保護に欠けることとなっており,又は欠けることとなるおそれがあることのないように,その業務を行わなければならない(同法40条1項1号)。これらは,直接には,公法上の業務規制という位置づけのものではあるが,証券会社の担当者が,顧客の意向と実情に反して,明らかに過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘するなど,適合性の原則から著しく逸脱した証券取引の勧誘をしてこれを行わせたときは,当該行為は不法行為法上も違法となると解するのが相当である(最高裁平成15年(受)第1284号同17年7月14日第一小法廷判決・民集59巻6号1323頁参照)。

  そして,証券会社の担当者による取引の勧誘が適合性の原則から著しく逸脱していることを理由とする不法行為の成否に関し,顧客の適合性を判断するに当たっては,取引ごとにその特性を踏まえて,これとの相関関係において,顧客の投資経験,証券取引の知識,投資意向,財産状態等の諸要素を総合的に考慮する必要があるというべきである。

  また,証券会社は,取得可能な情報量において,一般投資家と比較した場合,格段に優越しているから,適合性の原則とは別に,信義則上,顧客の属性,投資目的及び財産状況に照らし,不適切に多数量かつ頻繁な投資勧誘をしてはならない義務を負っているというべきである。また,証券会社は,顧客に対し,誠実かつ公正にその業務を遂行して(金商法36条),善良なる管理者の注意をもってその事務を処理すべきであるから(商法552条2項,民法644条),自己の利益を追求するために顧客の利益を犠牲にしてはならない義務を負うと解される。以上によれば,証券会社は,顧客に対し,過大な投資リスクを負わせてはならず,また,売買委託手数料等の支払経費を拡大し又はこれを累積させないようにすべきであって,証券会社が,これらの義務に反して,自己の利益を図るために,数量及び頻度において過度の投資を勧誘し,顧客の計算で当該証券取引を行い,経済的損失を被らせた場合には,不法行為を構成するというべきである。」

 

 この裁判例では、原告の学歴、知識、経験などから株式の現物取引と投資信託については違法性を否定しつつも、株式の信用取引いついては、証券会社が説明義務を果たしたとはいえず、手数料収入を得る目的だったとして不法行為の成立を認めました。

 

■投資顧問契約に基づく勧誘について

 東京地裁平成30年 9月11日判決(ウエストロー2018WLJPCA09118016))では、社債の購入を勧誘する際に、業績などから償還の見通しについて誤った説明をしたとして不法行為の成立が認められました。

 この裁判例では「投資顧問契約に基づき原告らに投資助言ないし個別の社債取得の勧誘等を行う以上,原告らに対し,上記誠実義務及びこれに由来する説明義務を負うというべきである。」として投資の助言・勧誘について重要な役割を果たした会計士・税理士に幇助として共同不法行為の責任をみとめました。

 

■お気軽にご相談ください

 投資の勧誘について違法性を認める裁判例も増えてきています。

 疑問などございましたらお気軽にご相談ください。

 

水野健司特許法律事務所

弁護士 水野 健司

電話:052-218-6790

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