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2019年11月25日

顧客情報や技術情報の持ち出しが違法になる場合

■はじめに

 顧客名簿や技術情報は、会社の重要な財産であり、営業秘密として保護されるものです。しかし、従来は、顧客名簿などを持ち出しても、なかなか違法とは判断されない実状がありました。

 

■従来の要件について

 従業員が顧客名簿を持ち出して名簿業者に販売した場合、これが違法となるためには不正競争防止法2条6項の「営業秘密」にあたる必要があり、特に「秘密として管理されている」(秘密管理性)が必要になり、これが認められるためには、①当該情報に対してアクセスできる者を制限すること、②アクセス制限が客観的に認識できる状態であったことが必要であり、特に①アクセス制限の要件として、パスワードの管理、鍵の管理が不十分であったため、秘密管理性を充たさないとする判断が多く、この①アクセス制限が高いハードルとなっていました。

 

■秘密管理性を緩めた判断

 東京高裁平成29年3月21日判決(判タ1443号80頁)では、刑事事件ですが従業員が顧客情報を自らのスマートフォンにダウンロードして名簿業者に販売したケースにつき、会社によるアカウントの管理が不十分でありアクセスできる従業員の数が特定できないような場合であっても、アクセスした者が企業にとっての重要な秘密であることがわかり、情報管理について教育もなされていた事実の下で、②秘密情報であることの認識可能性を肯定し、①は必ずしも要件とならないとして秘密管理性を認め、有罪としました。

 

■今後の傾向について

 この点について最高裁の判断は現段階では出ていませんが、情報漏洩に対する取締りを強化する方向性から、従来のアクセス制限の要件は補足的なものとされる傾向にあるようです。そのため、民事でも、顧客情報や技術情報など一般的に企業秘密とわかるような情報を漏洩する行為は違法であると判断されるケースが増えてくるものと考えられます。

 

■疑問などございましたらお気軽にお問い合わせください。

水野健司特許法律事務所

弁護士・弁理士 水野 健司

電話:052-218-6790

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