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2020年10月08日

取締役の任期が変更され、任期が満了になった場合

■はじめに

 株式会社で取締役になり、そのときの任期は10年でしたが、その後に定款が変更され、任期が短縮されていまいました。そのため当初の10年よりもだいぶ前に取締役の任期が終わってしまいました。会社に対して何か求めることができないでしょうか。

■取締役に戻れないか?

 まず会社が一方的に短縮されたとしても株主総会の議決を経ているなど手続に問題がなければ任期自体は有効であって、取締役に戻るということはできません。

 この点は取締役が株主総会で解任された場合も同様です。取締役の解任の場合、正当な理由がなく解任されても、解任自体が無効になるわけではなく、解任を有効として会社に損害賠償を求めることになります。

■将来分の報酬を請求できないか?

 では会社に将来分の報酬の支払いを求めることができるのでしょうか。

 東京地裁平成27年6月29日判決(ウエストロー2015WLJPCA06298007)では「「会社法339条2項は,株主総会の決議によって解任された取締役は,その解任について正当な理由がある場合を除き,会社に対し,解任によって生じた損害の賠償を請求することができる旨定めているところ,その趣旨は,取締役の任期途中に任期を短縮する旨の定款変更がなされて本来の任期前に取締役から退任させられ,その後,取締役として再任されることがなかった者についても同様に当てはまるというべきであるから,そのような取締役は,会社が当該取締役を再任しなかったことについて正当な理由がある場合を除き,会社に対し,会社法339条2項の類推適用により,再任されなかったことによって生じた損害の賠償を請求することができると解すべきである。」としています。

 そのため、取締役の意向に反して任期が短縮されたような場合であれば、再任されることが原則となり、再任されないことについて正当な理由がない限り、会社に損害賠償を求めることができることになります。

■まとめ

 取締役の場合は、労働契約の従業員とは異なる法律で救済されることになります。いずれにしても不当な取扱いを受けたと感じたときは、お気軽にご相談ください。

水野健司特許法律事務所

弁護士・弁理士 水野 健司

電話:052-218-6790

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