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2020年12月11日

うつ病による休職期間の経過で退職とされた事例

■問題の所在

 うつ病により休職期間が経過したことを理由に退職とされてしまいました。就業規則では1年6箇月の経過で退職するとの規定があります。会社に対して退職の有効性を争えないでしょうか。

■解説

 就業規則で一定の休職期間の経過により退職となった場合、解雇と異なり、会社は解雇権を留保していたことになるため、休職の原因となった事実を証明する責任は従業員側にあるとされています。つまり従業員側が就労できる程度に回復したことを証明しなければなりません。

 では休職期間が経過した時に職場に復帰できなかった場合、退職とされても仕方がないのでしょうか。

 この点東京地裁平成28年9月28日判決では「基本的には従前の職務を通常程度に行うことができる状態にある場合をいうものであるが,それに至らない場合であっても,当該労働者の能力,経験,地位,その精神的不調の回復の程度等に照らして,相当の期間内に作業遂行能力が通常の業務を遂行できる程度に回復すると見込める場合を含むものと解するのが相当である。」としました。

 つまり休職期間の経過時に十分回復していなくても相当期間内に回復することが見込まれる場合は退職とすることはできないことになります。

 そして「休職原因となった精神的不調の内容,現状における回復程度ないし回復可能性,職務に与える影響などについて,医学的な見地から検討することが重要になるというべきである。」としました。

 そのため、相当期間内に回復できることを医師が証明する場合は退職の扱いが無効とされる可能性があるといえます。

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