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2021年05月24日

試用期間経過後の解雇が無効とされた事例

■はじめに

中途で採用された従業員が試用期間の満了をもって解雇された場合、通常の解雇とは異なるのでしょうか。

 

■解雇が正当といえるかを問題にした裁判例

 この点過去の裁判では解雇権の留保により解雇を有効とした事例もあります(東京高裁昭和43年3月27日判決、判例タイムズ225号106頁)。

 しかし、この裁判例(東京地裁平成20年7月8日判決、ウエストロー2008WLJPCA07088001)では、販売員の試用期間経過後の解雇について、経歴、実績、解雇理由としての業務命令違反、報告義務違反の有無を検討し、業務命令違反はあるとしても解雇の正当性を基礎付けるには足りないとしています。

 この裁判例では、「原告に対する本件解雇は,正当性を欠き,本件雇用契約を期間途中で終了させるにやむを得ない事由(民法628条)があるとはいえないから,無効である。」と結論付けています。

 

■まとめ

 試用期間経過後の解雇に通常の解雇権濫用の法理がそのまま適用されるものではないにしても、解雇に正当な理由が必要とされることには変わりがなく、特に中途採用で専門的な知識や経験が要求されて報酬が高額になるような例外的事例でなければ、解雇を正当化できるだけの重大な理由が必要とされることで通常の解雇の場合とあまり変わりがないように思います。

 

■お気軽にご相談ください。

水野健司特許法律事務所

弁護士 水野 健司

電話:052-218-6790

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