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2021年09月30日

不貞行為に対する慰謝料として300万円以上が認められた裁判例

■はじめに

 夫婦関係にある一方と性交渉を持ち不貞行為を行った場合、夫婦の他方は不法行為に基づく損害として慰謝料の支払いを求めることができます。この場合の金額としては150万円から200万円とするものが多いようですが、中には300万円以上の慰謝料を認めたものもあります。 

これらの裁判例ではどのような要素があるのでしょうか。

■裁判例の紹介

(1)東京地裁令和3年1月20日判決2021WLJPCA01208011

 慰謝料として300万円が認められた東京地裁令和3年1月20日判決(2021WLJPCA01208011)では、「原告とAは,平成18年3月に婚姻後,平成29年8月に本件不貞行為が発覚するまで,約11年間にわたって平穏な家庭生活を営んでおり,原告とAの婚姻関係は,本件不貞行為によって,破たんしたと認められること,原告は,本件不貞行為を契機として,食欲不振や睡眠障害などの心身の不調による通院をするようになったこと,原告とAの間には,未成熟子である小学生の娘が二人いること,原告は,Aとの離婚を望んでおらず,被告に対し,Aとの関係を解消するよう述べたが,被告は,原告の申出を拒絶し,Aとの関係を継続し,現在,Aとの間の子と共にAと同居中であることからすれば,原告は,本件不貞行為によって,現在も多大な精神的損害を被っていることが認められる。」と判示しました。

 この裁判例では、妻が夫と不貞関係をもった女性を訴えたものですが、11年間続いた平穏な家庭が破綻したこと、2人の小学生の子がいること、原告の妻が精神疾患に陥ったこと、夫とその女性がその間にできた子と同居していることがあげられています。

(2)東京地裁令和元年6月18日判決2019WLJPCA06188005

 また慰謝料として300万円が認められた東京地裁令和元年6月18日判決(2019WLJPCA06188005)では、「被告とAが不貞関係をもったことにより,原告とAの夫婦関係は決定的に破綻させられ,原告は,2人の未成熟子ともども,精神的にも,経済的にも,平穏な家庭生活の基盤を失うに至ったものであり,被告の不法行為によって原告が被った精神的苦痛は甚大なものであると認められる。

 そこで,かかる精神的損害を慰謝すべき慰謝料の額は,300万円を下らないものと認めるのが相当である。」と判示しました。

 この裁判例でも妻が夫と不貞関係をもった女性を訴えており、平穏な家庭生活が破綻したこと、2人の未成熟子がいること、原告(妻)が精神的・経済的基盤を失ったことがあげられています。

(3)東京地裁平成22年10月7日判決2010WLJPCA10078009

 さらに慰謝料として400万円が認められた東京地裁平成22年10月7日判決(2010WLJPCA10078009)では、「被告は,Aと不貞関係に至った上,それによって原告とAとの婚姻関係を破綻させているところ,より詳細に検討すると,証拠及び弁論の全趣旨,特に被告とAとの間で交わされた電子メール(甲2)の内容によれば,被告は,Aとの不貞関係について,必ずしも消極的であったわけではなく,自宅の建築の中止,Aが居住するアパートの選定,原告との離婚等について,Aに対して少なからず助言を行っているほか,Aの不貞相手であることが明らかにならないようにするため,自らの特徴を偽ることなどを画策しつつ,自らの行為が原告の慰謝料請求権を発生させうることを認識した上で,Aとの不貞関係を継続し,しかも,本訴訟係属後も,Aとの関係が恋愛の自由市場における競争の結果に過ぎないなどと主張して不貞関係を継続していた。そして,原告にしてみると,特に,自らが勤務先であるa社の業務命令によって単身赴任をしている間に,同じ会社に勤務する妻のAとその同僚である被告が不貞関係となり,未だ婚姻関係にあるAが被告の子を妊娠という事態にまで至ったことや,被告が,原告の子らを伴って出かけたり,原告の子が居住するアパートに出入りするなどしてAとの不貞関係を継続していたことにより,著しい精神的苦痛を被ったということは想像に難くなく,その他,原告とAとの間には幼い2人の子がいること,Aの実家近くに自宅建築用の土地を購入し,自宅の建築請負契約を締結する直前の段階であったのに,被告とAとの不貞関係に起因してこれが頓挫するに至ったこと,被告とAとの不貞関係について,相当程度の負担を伴う調査等を行わざるをえない状況に陥らされたこと,一方で,原告の側に婚姻関係破綻による慰謝料額を減殺するものと評価できるほどの特段の事情を認めるに足りる証拠がないこと,これらに加え,証拠及び弁論の全趣旨によって認めることができるその他の諸事情を勘案すると,原告とAとの婚姻期間が必ずしも長くはないということなどを考慮しても,被告のAとの不貞関係及びこれによる原告とAとの婚姻関係の破綻等によって被った原告の精神的苦痛を慰謝するための慰謝料としては,400万円を認めるのが相当である。」と判示しました。

 この裁判例は夫が妻と不貞関係をもった男性を訴えた事件であり、発覚後も不貞関係を継続していること、夫婦関係が破綻したこと、幼児が2人いること、不貞相手の男性が同じ会社に勤務していることがあげられています。

■まとめ

 以上の裁判例では、いずれも不貞関係を継続する一方で、未成熟子がいる平穏な家庭生活・夫婦関係が破綻したことが共通しており、高額な慰謝料となったようです。

■お気軽にご相談ください。

水野健司特許法律事務所

弁護士 水野 健司

電話:052-218-6790

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