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2022年09月29日

誤嚥性肺炎入院歴がある高齢者に誤嚥防止措置をとらず食べ物を与えた行為に注意義務違反が認められた裁判例

■事案の概要

 本件は要介護5、89歳の高齢者に食事を与えたりおむつをかえたりする等の委託業務を行っていたヘルパーについて、単に家政婦としてだけでなく介護業務も含まれていることを認めた上で食べ物を与える際に誤嚥を防止する注意義務違反があると判断したものです。

 具体的には、誤嚥性肺炎で3箇月以上入院した既往症があり嚥下機能が低下していたため、食べ物を与える際は細かく刻んでペースト状にするか、とろみをつけるよう指示されていたにもかかわらず、焼き芋(さつまいも)を黒豆大に切ってそのまま提供したため、これを食べた高齢者が焼き芋を喉に詰まらせて窒息となり低酸素脳症で死亡したというものです。

 裁判所では、被告に食べ物を提供する際にとろみをつけるなどして細かい粒が口の中に残らないようにすべきこと、これを食べるときは咀嚼や嚥下の様子を観察すべきことを認め、被告はこれらを怠ったとして注義務違反を認めました。(大阪地裁令和3年7月19日判決、ウエストロー2021WLJPCA07196007)

■コメント

 嚥下機能が落ちている高齢者に食べ物を与える際には誤嚥を防止する措置を取った上で慎重に観察をしなければならず、これを怠った場合はその後に発生した窒息事故について損害賠償の責任が認められることになるという裁判例です。高齢者は嚥下機能が低下していることも多く、誤嚥が発生すると気管がつまり窒息となるとなる可能性も高いことから、食事や飲み物を提供するときは、座った状態にしてペースト状にするかとろみをつけ、少しずつ慎重に咀嚼や嚥下の様子を確認しながら行う必要があるということになります。
 

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水野健司特許法律事務所

弁護士 水野 健司

電話:052-218-6790

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