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2023年02月16日

[労働]指導の必要性があっても業務の適正な範囲を超えた叱責は違法なパワハラになる裁判例

■裁判例の内容

 東京地裁令和2年7月1日判決(判タ1486号208頁)は公立病院の事務職員が上司から度重なる叱責を受けた結果適応障害を発症したとして国家賠償法上の責任の有無について争われました。

 上司の発言は例えば、「嘘つきと言い訳の塊の人間なんだよお前。」,「生きてる価値なんかないんだから。」といった内容が含まれており、その職員の態度や言動を全面的に批判し、人格的な価値を否定するといった強いものとなっています。

 裁判所は職員に対する指導の必要性があった部分についても業務として適切な範囲を超えて原告に精神的苦痛を与えるものであるとして違法と評価されると判断しました。また教育のため叱咤激励する意図があったとしてもやはり違法となるとしています。

 本件では長時間にわたって叱責したり、他の職員が見ている前で叱責したことも配慮を欠くとされています。

■コメント

 どのような行為が違法なパワハラとなるのかについては事例ごとに異なり指導の必要性があり業務に関連した指導となると判断が難しい場合もあります。結局のところ、業務の適正な範囲を超えて精神的苦痛を与えるものかを判断することになります。本件のように人格的価値を否定する場合は判断は容易といえますが、実際はここまでひどいものではないが、うつ病や適応障害に罹患した場合に違法なパワハラと判断されるかは難しいところです。

 

令和5年2月16日

水野健司特許法律事務所

弁護士 水野健司

電話(052)218-6790

 

 

 

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