外国人との離婚(国際離婚) フィリピン人女性が偽装結婚していたケース
外国人との離婚(国際離婚) フィリピン人女性が偽装結婚していたケース
■架空の事例
フィリピン人女性と知り合い、つきあい始めました。
・その女性と結婚しようと思い、子どももできました。
・しかし、その女性には日本人の夫がいて、偽装結婚で在留資格(ビザ)を得ているとのことでした。
■問題点
・日本人夫との婚姻関係
・生まれてくる子どもの父親
・偽装結婚と在留資格
<解説>
このケースの問題は3つあります。
(問題1)日本人夫との婚姻関係
まずフィリピン人女性は、戸籍では、元の日本人夫と結婚していることになっているため、この女性と結婚するには、戸籍上の婚姻を解消する必要があります。
(問題2)子どもの父親
仮にこのまま子を出産した場合、戸籍上の夫が子の父親ということになってしまいます。そのため、この嫡出推定を覆すことをしなければなりません。
(問題3)偽装結婚と在留資格
偽装結婚だとしたら、違法に入国したことになり、フィリピン女性の在留資格がなくなってしまうのではないかという問題があります。
■日本人夫との婚姻関係
夫婦としての実体があるか?
偽装結婚であれば婚姻無効を求める。
偽装結婚でなければ離婚を求める。
※夫が行方不明でも裁判はできます。
<解説>
(問題1)日本人夫との婚姻関係
まずは戸籍上の日本人夫との婚姻関係を解消する必要があります。
共同生活や夫婦関係など婚姻の実体があったのかなかったのかにより解消の方法も変わってきます。
夫婦としての実体がなく、在留資格(ビザ)を採る目的だけで結婚したという偽装結婚だという場合、婚姻関係の無効確認を求めることになります。調停や訴訟を申し立てるのが通常でしょう。
民法741条1号「当事者間に婚姻する意思がないとき」にあたり、その結婚は無効になります。
一方、夫婦としての実体がある場合は、離婚を求めることになります。協議が整わなければ調停を申し立てることになります。
この場合、日本人夫が行方不明になってしまっていることも多いですが、行方不明であっても現地調査などの手続を踏めば公示送達という方法で裁判をすることができます。
■生まれてくる子ども
戸籍上の夫が父親として推定される。
・偽装結婚で婚姻無効⇒認知・婚姻
・離婚⇒親子関係不存在確認を求める
※日本人の父親でないと日本国籍が取れなくなる。
<解説>
(問題2)生まれてくる子ども
仮にこのまま女性が子を出産するとその子の父親は戸籍上の夫ということになってしまいます。そのため、この親子関係の推定をくつがえす必要があります。
仮に女性と戸籍上の夫が婚姻無効ということで確定すれば、その婚姻は初めからなかったことになり、生まれてきた子に対する父親の推定もありません。そのため、この場合は、本当の父親が子を認知するか、出産前であれば結婚すれば、親子関係が発生することになります。
一方、女性が前の夫と離婚したという場合、出産の時期によっては、前の夫が父親と推定されるため、親子関係の不存在確認を求めることになります。調停や訴訟で争いとなる場合はDNA鑑定を利用する
この場合、子の父が日本人とならないと子が日本国籍を取ることができなくなってしましてしまいます。父親がフィリピン女性と結婚できない場合は女性が定住ビザを取得できるかどうかにも関係してきます。
■偽装結婚と在留資格
在留資格は法務大臣の裁量権
違法性が軽微で保護が必要な場合
・日本人の子を出産
・日本人父と結婚(保証人)
⇒多くの場合、在留特別許可が出る
さらに知りたい方は‥・・
<解説>
(問題3)偽装結婚と在留資格
偽装家近で入国した場合、違法に入国したということで在留資格は取消になり、強制退去の手続になる可能性があります。
ただし、あくまで法務大臣の裁量ということですが、違法の程度が軽微で保護の必要性が高い場合、特別に在留資格が認められる場合があります。
今回のケースのように、日本人の子を出産し、日本人男性と結婚するという場合、多くの場合は在留特別許可が出ると思われます。
■お問い合わせ
水野健司特許法律事務所
弁護士 水野健司
電話:(052)218-6790