記事

2019年10月17日

セクハラの損害賠償として385万円が認められた裁判例

■はじめに

 セクハラが裁判所で争われる場合、被害者の受けたセクハラ行為は、加害者と2人だけの密室でなされることも多く、行為の有無、同意の有無などが鋭く争いになり、当事者尋問により事実が判断されることもあります。

 

 この裁判例でも会社代表者による強制わいせつ、強姦につき不法行為の成立が争われました(東京地裁平成27年5月27日判決、ウエストロー 2015WLJPCA05278005)。

 

■事案について

 本件では会社の事務職員として勤務していた女性従業員(当時44歳)が、会社に勤務していた約1年の間に、会社社長から、胸や尻を触られる、スカートやストッキングに手をいれられる、応接室のソファーに押し倒され強姦されるなどのセクハラを受けたと主張し、被告側がこれを争ったという事案です。

 

 本件では、社長の行為は、専務が不在で、被害者と2人きりになった状況で行われていたため、目撃者などの証人がなく、当事者双方の尋問が重要な判断の決め手となりました。

 

 また本件では、被害者が行為に対して同意をしていたか否かという点も争われましたが、裁判所は、当時既に被害者は社長に対し、嫌悪感、不快感を抱いており、仮に被害者が明確に拒絶しなかったとしても、当時両者が社外で会っていたり、個人的に付き合っていたわけではないとして、被害者の意思に反する行為であったと判断しています。

 

 そして社長の行為は被害者の性的自由・人格権に対する著しい侵害であるとして違法性を認定し、慰謝料として350万円、弁護士費用35万円の損害を認めました。

 

 なお、被害者が会社を辞めざるを得なくなった点について具体的な金額は示しませんでしたが、慰謝料の金額に反映されるものとされています。

 

■コメント

 セクハラの被害者は、加害者の申出を明確に断ることができず、むしろ好意的な態度をとってしまうことが少なくなく、そのような場合でも、最近の裁判例では不法行為が認められる傾向にあるといえます。

 疑問などありましたらお気軽にご相談ください。

 

水野健司特許法律事務所

弁護士 水野 健司

電話:052-218-6790

閉じる