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2019年11月07日

商品の形態が出所を表示するものとして保護される場合

■はじめに

 商品の形は、意匠権や実用新案権により保護されますが、これらは特許庁に対する出願手続が必要です。また不正競争防止法2条1項3号はいわゆる形態摸倣を不正競争行為としていますが、これは国内販売を開始してから3年以内の保護になります。

 そこで、ここでは商品の形が出所の表示として保護される場合である不正競争防止法2条1項1号の商品等表示にあたる場合を説明します。

 

■なぜ商品の形態が商品等表示として保護されるのか?

 商品の形に特徴がありそれが製造・販売する者の出所を表すまでになっている場合、その形はいってみれば、ブランドとして信用が発生します。一般の消費者は、その形をみて、これは信用のできる業者が販売するものだからと信頼してその商品を買うことになります。

 しかし、第三者がその商品の形を摸倣して商品を販売した場合、一般の消費者は、信頼していた業者ではなく、第三者が製造・販売した商品を間違えて買ってしまうことになります。

 そこで、商品の形であっても特に特徴があり、需要者に周知となっているものについては、これと同一又は類似の形を使って販売等する行為を不正競争行為としたのです。

 

■どのような場合に商品等表示として保護されるのか?

 知財高裁平成241226日(判例タイムズ1408 235頁)では、以下のように判示しています。

「 同号にいう『商品等表示』とは,『人の業務に係る氏名,商号,商標,標章,商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するもの』をいう。商品の形態は,商標等と異なり,本来的には商品の出所を表示する目的を有するものではないが,商品の形態自体が特定の出所を表示する二次的意味を有するに至る場合がある。そして,このように商品の形態自体が特定の出所を表示する二次的意味を有し,不正競争防止法211号にいう『商品等表示』に該当するためには,①商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性),かつ,②その形態が特定の事業者によって長期間独占的に使用され,又は極めて強力な宣伝広告や爆発的な販売実績等により(周知性),需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっていることを要すると解するのが相当である。」

 

■なぜ厳しい要件が課されるのか?

 裁判例では、商品の形態が商品等表示として保護されるために、特別顕著性と周知性という高いハードルを課しました。商品の形を少し工夫したという程度では保護されないのが現状です。

 それは、仮に商品等表示として保護されるということになれば、その商品について独占権というとても強い権利が発生することになり、市場に与えるインパクトが大きいからです。その意味で商品の形態は意匠権等で保護するのが法律の建前であり、商品等表示にあたるというのは例外的な取扱いということができます。

 裁判例でも眼鏡タイプのルーペの形、スーツケースの表面の形について結論として商品等表示による保護を否定しました。

 

■お気軽にご相談ください

 形態や表示について疑問があれば遠慮なくご相談ください。

弁護士・弁理士 水野健司

電話:052-218-6790

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