[労働]居眠りを起こそうとして両肩を叩いた行為について損害賠償が認められた裁判例
[労働]居眠りを起こそうとして両肩を叩いた行為について損害賠償が認められた裁判例
東京地裁平成29年 3月 1日(2017WLJPCA03016001)
■事案の概要
勤務中に座って居眠りをしていた原告に対し、背後から両肩を叩いた行為について違法な有形力の行使であるとして損害賠償が認められました。
■裁判所の判断
本件行為は居眠りをしていた原告を起こすために行ったものでしたが、裁判所は、「あらかじめ原告に声を掛けるなどせずにいきなり」なされたものであるとし、「原告の背後からその両肩にめがけて,自らの両手を肩付近から振り下ろして1回たたいており,有形力の行使の程度等からしても軽微なものといえず,しかも,座っていた原告に対する不意の行為であって,転倒などの危険があるほか,頭部などが不意に揺れてむち打ち等の傷害を与える危険性のある行為といわざるを得ない【なお,原告が居眠りをしていた場合は当然より危険な行為というべきであるし,仮に,原告が述べるとおり,居眠りをしていなかったにせよ,背後から不意を衝くものであった以上,ある程度危険なものと評価せざるを得ない。】。」として本件行為が違法な有形力の行使にあたると判断しました。
そしてまずむち打ちについては、「原告の「頸椎捻挫」すなわちむち打ちについては,本件行為から引き起こされたものと認められる。」としましたが、しびれなどの神経症状についてはヘルニアの基礎疾患があったことを前提に相当因果関係を認めました。
もっともヘルニアの基礎疾患については過失相殺の規定を類推適用して50%の減額としました。
■コメント
居眠りをしていた原告に対し声を掛けることなく背後から強い力を加えたことでむち打ち症状などを発症したものですが、本件ではヘルニアにより症状が大きく増悪したという事案であり結果からみても社会的相当性を逸脱しているとして違法性が認められました。現実にはここまで重度の症状が出ることはあまりないとは考えられますが同僚を注意する趣旨で叩くとしても不意打ちになるような態様は避けなければならないところでしょう。