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2023年07月13日

[技術]システム開発を請負でないとして仕事完成義務を否定しつつ善管注意義務違反が認められた裁判例

■事案の概要

 東京地裁令和2年9月24日(2020WLJPCA09248012)ではシステム開発について仕事を完成させることのできなかった開発業者(受託者)に報酬請求を認めた一方、受託者は準委任として善管注意義務を追うとして損害賠償責任があるとされました。

■裁判所の判断

 まず本件システム開発は被告が仕様を明らかにしていなかったことなどから原告は成果物の完成義務を負わない準委任契約の形で契約することを希望し、その内容で締結されたことから本件で準委任として成果物を完成させる義務はないとして原告が求めた報酬請求が認められました。

 もっとも、原告はプログラムの作成を目的とする開発業者であり、「このような原告の立場や役割に照らせば,原告は,被告又はゆるりとから指示を受けた業務を実施する義務にとどまらず,本件契約上の善管注意義務として,本件システムの開発において必要となる作業の内容並びにその作業に必要となる期間及び人員を把握し,適切な工程を示す義務を負っており,相手方から示された仕様の内容が十分でなく,適切な工程を示すことが困難である場合には,仕様を確定する期限を定めるなどの具体的方策を講ずる義務を負っていたと解すべきである。」として踏み込んだ形の注意義務を認めました。

 そして本件では原告の示した工程が成果物の完成に向けた現実的なものであったとはいえないとして開発業者に注意義務違反があるとしました。

■コメント

 システム開発は通常であればプログラムが完成しなければ意味がなくその意味で請負の法的性質を有するのが普通であるといえるでしょう。

 本件では開発業者が仕事の完成義務を負わない準委任として契約を締結していましたが、開発業者として成果物の完成に向けた工程をとらなければ善管注意義務違反として債務不履行責任を負うことになるという結論となりました。

 本件では注文者が仕様を確定させなかったことからシステム開発業者として仕事の完成ができないと考えていたようですが、現実的でない工程を示すようなことは業務を真摯に果たしていないとされても仕方がないと言えるでしょう。

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