運送業で残業代が発生しているかをどう判断するか(名古屋の弁護士)
■どう計算するか?
残業代は会社が就業規則などで定める所定労働時間を超えて働いた場合に支払われます。基本的には時間数に基礎となる給料(基礎賃金)の時給を掛け合わせて計算します。
基礎賃金は月給の基本金や役職手当などを加算して1箇月当たりの所定時間数で割って時給を出します。家族手当や通勤手当は基礎賃金に含まれません。
時間数は1日8時間、1週間40時間という法定時間数を基準に内側であれば基礎賃金の時給、外側であれば時間外労働として基礎賃金の時給に割増率を掛け合わせて計算します。
また法定休日に出勤した場合や午後10時から午前5時までの間に働いた場合もそれぞれ割増率を掛け合わせて計算します。
■なぜ未払いの残業代が発生するのか?
運送業では運転手が働いているところを直接見ることができないため、運転手が残業代を稼ぐために、あえてゆっくりと仕事をするのではないかという不安があります。
そのため運送会社は走行距離や配送した実績に応じて給料を払うことによって運転手がだらだらと仕事を長引かせようとするのをやめさせようとします。
これが歩合給や固定残業代という考え方につながることになります。
つまり会社は長時間仕事をするよりも効率よく仕事を終わらせた方が得だというメッセージを運転手に伝えようとします。
歩合給は走行距離、荷物の数、売上などの実績に連動させて金額が上がっていくという制度です。
固定残業代は予め例えば50時間分を定額で決めておいて残業時間がそれよりも短くても定額で支払うという制度です。
もっとも、労働基準法が基本的に労働時間を管理して労働者の給料を決めようとしていることや会社ができるたけ残業代の支払いを免れようとするなどから、多くの運送業で給与制度や周知が不十分となってしまっている現状があるのです。
■残業代が発生していることを見分けるには?
残業代が支払われているか、疑わしい場合としてつぎのようなことが挙げられます。
⑴求人票や労働契約書で定めた月金額が支払われていない
運送業では常に人手不足であることから求人票や労働契約書では高い金額の給料が書かれていることがあります。
このような場合にその金額が支払われていなければ、その差額は契約違反として支払いを未払い分として請求できる可能性があります。
⑵給与体系が複雑で計算方法がわからない
多くの運送業では1年間の変形労働時間制を採用しており、歩合給や固定残業代を組み合わせているため給与体系が複雑になっています。
もっとも、会社は給与体系を複雑にすることによって労働者が正確に計算されているかをわからないようにしている場合もあるため、計算方法がわからないような場合は疑ってみる必要があります。
会社は労働者から問合せがあれば計算方法をわかりやすく説明しなければならないことになります。
⑶基礎賃金と残業代の区別があいまいとなっている
判例では基礎賃金にあたる通常の労働時間の賃金に当たる部分と、残業代などの時間外労働等の賃金に当たる部分とは明確に区別されていなければならないとされています。
歩合給は実績に応じた給料なので残業代ではなく基礎賃金に加えた上で、さらに残業時間に応じて残業代を計算しなければなりません。
また固定残業代として例えば50時間分が支払われていたとしてもそれを超える時間は時間外労働として残業代を支払わなければなりません。
基礎賃金の部分と残業代の部分とがわかりやすく区別されていない場合は残業代が支払われていない可能性があります。
■高い給料を支払っていても残業代の支払いが発生する
運送業ではどこでも人材不足なので運転手に高い給料を支払っている会社も多いのですが、これまで見てきたように高い給料を払っていても残業代として計算されなければその支払い分は基礎賃金ということになり、残業時間数に応じて残業代を支払わなければならなくなります。
歩合給や固定残業代などでは、会社としては残業代を支払っていたつもりであっても、給与体系にあいまいな部分があって、残業代が支払われていなかったということが起きるのです。
いずれにしても疑問があるときは早めに弁護士に相談して、労働者に残業代が発生していないかを確認してもらうとよいでしょう。
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水野健司特許法律事務所
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